愛壷 W10.0cm D10.0cm H11.0cm
愛壷 W10.0cm D10.0cm H11.0cm
十二代 三輪 休雪(龍作)Junidai Miwa Kyusetsu(Ryusaku)
十二代三輪休雪こと龍作は、長州藩毛利宗家の御用窯を代々務めていた、由緒ある萩焼窯元三輪家の当主・壽雪(十一代休雪)の長男として生まれました。のちに前例のない兄弟での人間国宝となる壽雪と伯父の三輪休和(十代休雪)、当代きっての名人ふたりによって、名門の跡目を継ぐために技法や作陶姿勢を徹底的に仕込まれたそうです。
伝統的な素材と技法に親しむ一方で、進学のため上京した休雪は、既存の名品名作に近づけようとする日本の焼き物文化の在り方に反発を覚えるようになりました。新たな芸術や価値観との出会いがそれに拍車をかけていきます。太宰や谷崎の文学に影響を受けるなど、自身の内的世界と芸術観とが構築されていった時期と言えるでしょう。やがて洋画に没頭し、ムンクやゴヤ、ゴッホなどに傾倒、画家を志すようになりました。
オリンピック開催に沸く1964年、休雪は日本初の開催となった国際陶芸展に赴き、初めて外国の自由な陶芸作品に触れました。凝り固まった因習の枠に囚われず、自分の気持ちを正直に表現する、純粋芸術としての陶芸がそこにはありました。伝統の素材と技法を用いてその自由さを発露することこそが自らの使命であると気付いた時に、休雪は再び陶の世界に戻ることを決意したのです。
東京藝術大学大学院陶芸専攻修了展にて、処女作「花子の優雅な生活(ハイヒール)」を発表した時から、エロティシズムと死という人間にとって極めて本質的なテーマを扱ってきた休雪。筆者が彼の作品に対峙した際には、都度自分の価値観がいかに凝り固まった物であるかを思い知らされます。生活の中で日々蓄積される常識や思い込みを粉々に打ち砕かれることが、時として代えがたい快感となることも少なくありません。
古きを重んじる陶の世界に、異物とも言えるエロスを持ち込むことで、休雪は新しい視点や芸術感を構築してきました。「伝統の本質は革新」と言い切る彼の信念こそがすべての作品に通底して流れている大きなテーマであり、その魅力の核となるものです。